メーカーが何かやらかしたらお客様が被害になることが多いですが、それを対応する従業員もある意味では被害者です。
そんな一つに美容業界でも数々の事件がありましたので、思い出とともに振り返りたいなぁと思います。
カネボウ白斑事件
まずカネボウって会社についてですが
誰でもご存じの国内シェア3位の大手化粧品会社です。
ちなみに1位資生堂 2位花王 です。
さらに花王の完全子会社
もともとは繊維をあつかう鐘淵紡績株式会社(かねぶちぼうせき)ってのが110年くらい前にあって
かねぶちぼうせき ⇒ かねぼう ⇒ カネボウ ⇒Kanebo
です。
化粧品事業は80年くらい前からやっていて、他の事業が結構債務超過になっている中でも唯一好調だったのが化粧品事業だったらしいです。
デパートでもドラックストアでも目にするくらい超絶メジャーな化粧品メーカーですね。私は唯一「アリー」っていう日焼け止めだけお世話になったことがあります。
大手国内化粧品の悪いところなんですが
商圏がかぶりまくる上に
対象年齢も乳母車から墓場まで
メガブランド戦略にしすぎ
つまり
どのメーカーも似通ってしまいがち!!
消費者もどメーカーか知らずに使って同じの買おうと思ったら
どのメーカーだっけ??ってなったりしません?
例えばアイブローのリフィルとか・・・・あれ???これどこの??
ホルダーの刻印・・・・消えてしまってわかんない・・・・
お察しします。
そんなKaneboさんがある事件を起こします。
20代の人はギリギリ知らないかもしれません。
そのカネボウさんの美白美容液で白斑を引き起こす事件が起こったんです。
小難しい数値とかはなしでお送りします。
2013年5月、皮膚科医から白斑の被害がカネボウに入ったのですが
担当者は「化粧品による症状ではない」と判断したらしく。経営陣に伝わってなかったそうです。そこが痛かった!!その医師からの報告の2週間後に調査を開始。
6月末になってやっと「自主回収」を開始しました。その時までの被害は39件と発表しました。それも良くなかった!!大した事無い感を出したかったのでしょう!!
問い合わせは10万件を超えたそうです。7000人が症状を訴えて、症状の重い人が2000人くらいいたそうです。
翌月に社員によるお客様への訪問対応を開始。その後・・・・・どんどん被害は増えていったのです。
これが事件の始まりです。
怖いですよね・・・・・
普段何気なく使っている美白化粧品が原因で白斑になってしまう!!
白斑ってのは一部の皮膚の色素形成細胞が死んでしまったり、機能を停止してしまう事でダルメシアン犬みたいにまだらな皮膚模様になってしまう症状です。
先天的になる場合もあり、今回のように後天的に発症するとこもあるので原因は様々あります。
今回のキー成分が ロドデノール という美白有効成分にあります。
ロドデノールについて
2008年1月に「メラニン生成を抑え、しみ、そばかすを防ぐ効果を有する」新規の医薬部外品の有効成分としてカネボウは厚生労働省の認可を取得しました。
それを取得すると「美白有効成分」になるので「医薬部外品」って表示ができるんです。それは化粧品メーカーにとっては大きな宣伝効果を持ちます。
その年から2013年4月にかけて、ロドデノール配合の美白化粧品が累計436万個販売されました。
ロドデノールはチロシナーゼ阻害剤で、簡単に言うと肌色を作る細胞が表皮にあるんですが、それを色素形成細胞。またの名をメラノサイトって言います。
そのメラノサイトの中ではメラニンが作られるのですが、日の光を浴びると褐色のメラニンが増えるので肌が黒くなります。反対に日の光を浴びずに引きこもっていると肌は白くなります。
美白化粧品は日の光を浴びてもメラミンの発生を抑えるので、日の光を浴びた肌でもそれを抑え込んでくれる効果があるんですね。なので肌を白く維持することができたり、過剰にメラニンが出てしまっている部位である「シミ」を薄くすることが期待できます。
そのメラニンを抑えるにはチロシナーゼというシミになる酵素を抑えたい!それが出来るのがロドデノール!
まさにロドデノールはシミをケアするのに最適な美白有効成分だったのです。
が
そのチロシナーゼの酵素を抑える過程で生じる代謝産物のヒドロキシロドデンドロールが色素形成細胞(メラノサイト)に対する強い毒性を持っていたんです。なんて事でしょう!!
そしてメラノサイトが死んでしまい
肌色が作られなくなるため
肌が部分的に白くなったというわけです。
でも認可とってんじゃないの?
問題となっている美白成分「ロドデノール」は、カネボウ化粧品が厚生労働省から「医薬部外品」として承認を受けている成分です。
医薬部外品は、いわば医薬品と化粧品の中間のもので、化粧品よりも承認審査が厳格であるのと引き替えに、承認されれば、「美白」「保湿」など、より具体的な効果・効能をアピールできます。
それ無しに歌うと、違法になります。景品表示法とかだったけな?
厚労省の指示である1000例を上回る1200例の利用者を追跡調査、安全性に問題がなかったそうなので、一応は国の基準を満たしながらも大規模な健康被害に発展してしまったということです。
じゃぁ国が何とかしてくれんのか???
残念!!!医薬部外品には、万が一事故が起こった場合の、公的な救済制度が設けられていない!
医薬品によって引き起こされた後遺症などを伴う重篤な副作用については、国が金銭的な支援をする制度がありますが、医薬部外品は、どんな重篤な健康被害であっても救済の対象外なんです。マジかよ!
なので症状によっては個人またはメーカーからの保証で何とかしなければならんのです。
そしてその被害人数ですが、なんと
19607人
ひぇ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
消費者目線になり切れないのですが、従業員目線からするとデスマーチです。
対応は??
事件発覚から対応まではとにかくマスコミにも叩かれまくってお昼のワイドショーでももちきりでした。
カネボウの管理の杜撰さや、経営陣の危機感のなさが大いに指摘されました。
そりゃ所詮、医薬部外品だから、肌に対する作用もそこまで大きくないのが当然の事なので、ある意味当たり前のように思います。
リポビタンDで飲んだら毛が抜けたって言われてもピンとこないでしょ?(違うか)
カネボウはその後、
「該製品を使用し、白斑様症状を発症したお客様には、完治するまで責任をもって対応する」
を基本方針とするロドデノール対策本部を設置しました。
症状が確認された利用者には医療費や医療機関への交通費、慰謝料を支払う方針です。
当時の消費者庁の長官が定例の記者会見で
「5月(2013年)の時点で使用中止を呼び掛けていれば、被害を少しでも減らせたはずだ」
と指摘したんですね。ごもっともです。
今後の消費者庁としての対応について、カネボウ化粧品の対応を注視しつつ
「製品の回収状況や被害の広がり、被害者の回復の状況などは、週に1度は報告を求めたい」
との事です。厚生労働省の認可体制もどうにかした方がいいと思いますけどね。
その後
実は事件から今も対応は続いてます。
2021年9月30日の報告で
白斑症状を確認した人数・・・・・・・・・・19607人
和解合意した人・・・・・・・・・・・・・・18835人※完治してない人含む
完治・ほぼ回復した人は11922人
まだ7685人が白斑症状が続いているという事でしょう。
販売戸数は436万個中70万個回収してます。
定期的に報告を更新してます。真摯に向き合っているのですね。
ついでに2021年9月に9個製品を回収したみたい。。。。狂気を感じます。
被害報告を見てみたのですが、調査をした女性の大半はどうやら他のメーカーも使っていることが多かったようです。成分を見てみると資生堂とか使ている人がいましたね。
私のいたメーカーでは当時は一時販売を停止する措置が取られました。というか百貨店からの停止の判断が下されたのを覚えてます。
事件発覚からは経営陣の対応の遅さを非難する声も多かったですし、関係のないメーカーでも返品したいとの申し出がおおかったのと、何より美白が全く売れなくなりました。でも0ではないです。
情報に流されないお客様は自分の判断で大丈夫と分かっている風なので、かまわず使います。
でもその事件以降、美白の風当たりは半年くらい続いていたように思います。
とくに発覚したのが夏の時期だったので、売り上げの下方修正がありつつも日焼け止めの方で何とかしよとした思い出があります。
ただ消費者としては不安でしょう。
治るか治らないか分からない白斑が急に出てきたら・・・・しかも肌に何かしらの思う人が使っているので、意識がそもそも高い人が使いますからね・・・
関係ないメーカーとは言え、同じ美容業界。
なぜか持論を展開して罵詈雑言を吐きまくるお客様もいました。
でも美容部員でカネボウの社員をたたく人は誰もいません。
美容部員が悪いわけでは無いですし、これから襲う苦労を誰しもが感じていました。
それに付け込んで「弊社の美白は安心です!」←これって暗にカネボウを貶めた言い方。
こんな言い方で自社製品を推奨する美容部員もいなかったと思います。
なんというか、この状況を危機と感じながらもお客様とデパート社員と美容部員で一緒に乗り越えていくような少し熱い期間のようでした。
それでも当時の売り場で「医薬部外品」は販売が出来なくなるくらい風当たりが強くなっていきます。
カネボウというメーカーがいかに大きいかという事が分かります。花王も親会社としてはかなりの痛手を被ったことでしょう。
でも今はよりテストを厳格にしつつ、美白製品を出しております。
ちなみに従業員も同じ製品を使っていて200人以上が同じ製品で同じ被害に遭っているようです。
ついでに言うとカネボウって多角経営の失敗で600億近い負債を抱えていた企業なんです。詳しいことは知らないのですが、本業の紡績が赤字続きでカネボウ化粧品を分離した経緯もあるので、内部は根本的な問題を抱えていたりします。それもこの事件の一端に関わってそうな気がしますね。
最近はそういう被害は聞きませんが、聞かないという事はかなり早い対応で表ざたにならないことが増えているのかもしれません。
使うスキンケアについては、一つ。こういう事もあるんだなと思っていただきたいと思います。
以上です。